はじめに
千年以上の歴史を持つ日本の皇室。その中でも最も厳かに執り行われる儀式の一つが「斂葬(れんそう)の儀」です。
一般の葬儀とは異なり、納棺から埋葬まで、長い歴史の中で受け継がれてきた伝統と格式が息づいています。
天皇と皇族では、その位により儀式の形式は異なるものの、いずれも深い敬意と祈りが込められた荘厳な儀式として執り行われます。
本記事では、一般にはあまり知られていない斂葬の儀の全容について、8つの段階に分けてわかりやすく解説していきます。
目次
斂葬の儀とは
崇仁親王妃 百合子殿下の御薨去の報に接し、謹んで哀悼の意を表しますとともに、府民を代表して、心からご冥福をお祈りいたします。
— 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) November 15, 2024
府庁本庁において、斂葬の儀まで半旗掲揚します。併せて、府庁本庁において記帳所を設置します。 https://t.co/yCiWfRbob5
「斂葬」という言葉の「斂」には「おさめる」という意味があります。つまり、斂葬の儀とは、故人を丁重に棺に納めて埋葬する儀式を指します。
一般の葬儀とは異なり、皇室ならではの伝統と格式が守り継がれています。
天皇と皇族の違い
天皇の場合は「大喪の礼」として国の儀式に位置づけられ、皇室典範に定められています。
一方、皇族の斂葬の儀は皇室の儀式として執り行われ、天皇や三后(皇后・皇太后・太皇太后)以外の皇族は、1873年(明治6年)以降、豊島岡墓地に埋葬されることが慣例となっています。
斂葬の儀の8つの段階
1. 薨去と安置
皇族が薨去(こうきょ:皇族の死去を表す敬語)されると、まず宮邸内に遺体が安置されます。この時点から、厳かな雰囲気のもと、一連の儀式が開始されます。
2. 御舟入りの儀
一般の葬儀でいう納棺にあたる儀式です。「御舟」という言葉には、故人の魂が安らかに旅立つようにという願いが込められています。
3. 拝訣の儀
天皇、皇后をはじめとする皇族方による弔問が行われます。この場で、生前最後のお別れを述べることになります。
4. 正寝移柩の儀
霊柩を当該皇族の邸宅内に設けられた「正寝(せいしん)」と呼ばれる場所に移して安置します。
5. 通夜
一般の葬儀同様、数日間にわたって通夜が営まれます。ただし、皇族の場合は、より厳格な形式に則って執り行われます。
6. 轜車発引の儀
特別な霊柩車である「轜車(じしゃ)」を使用して、邸宅から豊島岡墓地まで柩を移送します。
7. 斂葬の儀(本儀式)
この段階が、最も重要な本儀式となります。
- 葬場の儀:勅使や皇后宮使、その他皇族による葬儀が執り行われます。伝統的に、天皇と皇后は直接参列せず、使者を派遣することが慣例となっています。儀式後には、一般の方々による拝礼も受け付けられます。
- 火葬:葬場の儀の後、出棺、火葬が行われます。
- 墓所の儀:火葬後の遺骨を墓所に葬ります。特徴的なのは、いったん仮の塚を設けて数日間の一般拝礼を受け付けた後、正式な墓を造営する点です。
8. 諒闇
最後に、天皇・皇后は諒闇(りょうあん)と呼ばれる服喪期間に入ります。この期間は、故人を追悼し、宮中行事なども自粛されます。
現代に受け継がれる伝統 まとめ
斂葬の儀は、長い歴史の中で形作られてきた皇室の重要な儀式です。一般の葬儀と比べると、より多くの段階を経て、それぞれの場面で伝統的な作法が守られています。
特に注目すべきは、天皇・皇后が直接葬儀に参列せず、使者を派遣する慣例です。これは、天皇の地位の特殊性と、皇室の伝統を象徴する重要な特徴といえるでしょう。
また、一連の儀式を通じて、故人への深い敬意と、皇室としての品格が表現されています。
このような伝統的な儀式が、現代においても大切に受け継がれていることは、日本の文化と歴史の重要性を改めて感じさせてくれます。
斂葬の儀は、単なる葬送儀礼ではなく、日本の皇室文化を象徴する重要な儀式として、これからも継承されていくことでしょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。(^^♪