はじめに
近年、社会問題として注目を集めている「カスハラ(カスタマーハラスメント)」。
顧客や利用者による従業員への暴言や威圧的な態度、理不尽な要求などを指す言葉です。
東京都が実施した調査によって、行政機関における深刻な実態が明らかになりました。
今回は、カスハラ(カスタマーハラスメント)の実態についてご紹介します。
カスハラの実態:都内自治体の7割が被害
「お前じゃ使えない」「税金泥棒」は日常的、電話の半数は「罵声」の部署も…都内42区市町でカスハラ被害https://t.co/VXydumKGcv#ニュース #税金泥棒 #カスハラ
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) December 26, 2024
東京都が都内62の区市町村を対象に実施したアンケート調査では、実に7割にあたる42の区市町村がカスハラ被害を報告しています。
この数字は、行政サービスの現場で働く職員たちが直面している厳しい現実を浮き彫りにしています。
被害の加害者として最も多く挙げられたのは「住民」でした。その他にも「契約相手の業者」や「議員」からのハラスメントも報告されています。
特に注目すべきは、カスハラの実態調査を実施している自治体が全体の2割強にとどまっているという事実です。
これは、実際の被害がさらに広範囲に及んでいる可能性を示唆しています。
現場の声から見える深刻な実態
ある区の広聴部署に勤める30代男性職員の証言によると、区民からの電話の約半数が罵声を含むものだといいます。
「お前じゃ使えない」「税金泥棒」といった暴言は日常的に発生しており、長時間の電話対応で休憩時間さえ確保できない状況も報告されています。
特に深刻な事例として、マイナンバーカード関連業務での出来事が挙げられます。
ある多摩地域の自治体では、手続きのために必要な書類を持参していなかった利用者が、対応できないと伝えられた際に「殺すぞ」という脅迫まで行うという事態が発生しています。
自治体の対策と課題
調査によると、現在カスハラ防止に取り組んでいる自治体は5割強にとどまっています。具体的な対策として以下のような取り組みが行われています:
- 職員の名札を姓のみの表示に変更
- 対応マニュアルの作成
- 事例の庁内での共有
- 通話録音機の設置
例えば、昭島市では2024年3月から本庁舎での外線電話の録音を開始し、被害の把握と抑止効果を期待しています。また、2025年2月からは名札を姓のみの表示に変更する予定です。
今後の展望:都の条例施行と対策強化
東京都は2025年4月にカスハラ防止条例を施行予定で、自治体も対象に含まれることになります。
また、2025年2月頃には共通マニュアルを作成し、各業界でのマニュアル作成を促進する方針です。
しかし、カスハラ対策には様々な課題も存在します。自治体からは「カスハラの定義づけが難しい」「行政サービスを受ける権利がある市民への対応の難しさ」といった声が上がっています。
まとめ:求められる社会全体での取り組み
カスハラは、単なる個人間の問題ではなく、社会全体で取り組むべき重要な課題です。行政サービスの現場で働く職員たちは、市民の権利を守りながらも、自身の尊厳も守られるべき存在です。
今後は、条例の施行とともに、以下のような取り組みが重要になってくるでしょう:
- 市民への啓発活動の強化
- 効果的な防止対策の実施
- 被害者支援体制の整備
- 組織全体での取り組み強化
私たち一人一人が、サービスを提供する側と受ける側の相互理解と尊重の精神を持つことが、この問題の解決への第一歩となるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。(^^♪