はじめに
2025年1月、日本の宇宙科学の歴史に一つの区切りが付けられました。
X線天文衛星「すざく(ASTRO-EII)」が、その20年近い宇宙での journey を終え、大気圏に再突入したのです。
この出来事を機に、「すざく」の功績と意義を振り返ってみましょう。
目次
「すざく」とは何か?開発から打ち上げまで
X線天文衛星「すざく」大気圏に再突入 科学観測終了から10年https://t.co/IWoTnwB0nj pic.twitter.com/pCOUCtE0TT
— sorae 宇宙へのポータルサイト (@sorae_jp) January 11, 2025
2005年7月、JAXAは M-V ロケットを使用して「すざく」を打ち上げました。この衛星は日米共同開発による野心的なプロジェクトでした。
主な目的は、宇宙の遠方天体からのX線観測と、高温プラズマのX線分光観測でした。
搭載された最先端観測機器
「すざく」には、当時としては最先端の観測装置が搭載されていました:
- 5台のX線望遠鏡(XRT):口径40cmの高性能望遠鏡
- 高分解能X線分光器(XRS):精密な観測を可能にする装置
- 4台のX線CCDカメラ(XIS):詳細な画像撮影用
- 硬X線検出器(HXD):より高エネルギーのX線観測用
科学的成果と発見
おとめ座銀河団の研究
「すざく」の最も注目すべき成果の一つは、約6000万光年離れた「おとめ座銀河団」の観測でした。
この観測により、銀河団内の元素組成が内側から外側まで一定であり、さらに驚くべきことに、その組成が太陽系周辺とほぼ同じであることが判明しました。
この発見は、宇宙の化学進化の理解に大きく貢献しました。
ブラックホール研究への貢献
約24億光年先にある銀河「IRAS F11119+3257」の観測では、中心にある超大質量ブラックホールの活動を詳細に観測することに成功しました。
このブラックホールが、周囲の物質を光速の約4分の1という驚異的な速度で放出している様子が確認され、これが銀河内の星形成活動に影響を与えている可能性が示されました。
予想を超えた長期運用と最期
目標寿命の5倍という驚異的な運用期間
当初の目標寿命はわずか2年でしたが、「すざく」はその予想をはるかに超えて活動を続けました。
しかし、2015年6月になると通信が不安定になり始め、科学観測の中断を余儀なくされました。
最後の数年と大気圏再突入
老朽化によりバッテリーの機能が低下し、姿勢制御が不可能となった「すざく」は、約3分に1回の回転を続けながら、太陽電池パネルが太陽光を受ける時だけ電源が入る状態となりました。
そして最終的に、2025年1月5日23時41分頃、南太平洋上空で大気圏に再突入し、その20年近い使命を終えました。
X線天文衛星「すざく」とは:まとめ
「すざく」の成功は、日本の宇宙科学技術の高さを示すとともに、国際協力の重要性も証明しました。
その科学的成果は、現在も天文学の発展に貢献し続けています。
後継機となる観測衛星たちが、「すざく」が切り開いた道をさらに進み、宇宙の謎の解明に挑戦し続けることでしょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。(^^♪