はじめに
米国で大きな話題となっている1セント硬貨(ペニー)の製造コスト問題について、詳しく見ていきましょう。
トランプ大統領が「無駄遣いだ」と指摘し、製造停止を指示するという前代未聞の事態に発展しています。なぜ、このような事態になったのでしょうか?
1セント硬貨製造の驚くべき現実
トランプ氏、1セント硬貨は「無駄」 1枚4円の赤字、鋳造停止指示 https://t.co/68zAq2iFod
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) February 10, 2025
「作れば作るほど赤字」という矛盾
アメリカの造幣局が抱える奇妙な問題があります。それは、1セント硬貨を1枚作るたびに、約4円の損失が発生しているという事実です。
2024会計年度では、実に31億7200万枚もの1セント硬貨が製造されました。その結果、年間の損失額は約8530万ドル(およそ130億円)にも達しています。
つまり、1セント(約1.5円)の価値しかない硬貨を作るために、その3倍近いコストを投じているという、一見すると非合理的な状況が続いているのです。
デジタル時代における小額硬貨の存在意義
現代社会では、キャッシュレス決済が急速に普及しています。
スマートフォンによる決済やクレジットカードの利用が一般的となり、現金、特に小額硬貨の使用頻度は年々減少傾向にあります。
それにもかかわらず、なぜ多額の赤字を出してまで1セント硬貨を製造し続けているのでしょうか。
世界の潮流と各国の対応
諸外国の決断
実は、同様の問題に直面した他の先進国では、すでに対策を講じています。
- カナダ:最小額面硬貨の製造を中止
- オーストラリア:1セント相当の硬貨の製造を終了
- ニュージーランド:同様に小額硬貨の製造を停止
これらの国々では、経済的合理性を重視し、思い切った決断を下しています。
日本の場合
一方、日本では硬貨の製造コストは非公表となっています。その理由として、造幣局は以下の2点を挙げています:
- 国民の貨幣に対する信認を維持するため
- 貨幣の偽造を助長する恐れがあるため
アメリカの現状と今後の展望
複雑な収支バランス
興味深いことに、アメリカの造幣局全体でみると、実は「黒字」を計上しています。
50セント、25セント、10セントの硬貨製造では利益が出ており、1セントと5セントの赤字を補っているのです。
2024会計年度の通貨発行益は約9950万ドル(約151億円)に達しています。
政治的な動き
トランプ氏は自身のソーシャルメディアで、「1セント硬貨の鋳造は大きな無駄遣いだ。偉大な国家の予算から無駄をなくしていこう」と主張しています。
さらに、イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省も、この問題を重要な課題として指摘しています。
しかし、大統領の一存で硬貨の製造を停止できるかどうかは、法的に不透明な部分が残されています。
連邦議会の承認が必要となる可能性が高く、今後の政治的な展開が注目されます。
まとめ:変革の時期に来ている小額硬貨
デジタル決済の普及、製造コストの高騰、そして環境への配慮など、様々な観点から1セント硬貨の存続を見直す時期に来ているのかもしれません。
ただし、長年親しまれてきた硬貨をなくすことへの心理的な抵抗や、価格表示システムの変更など、解決すべき課題も多く残されています。
アメリカが今後どのような決断を下すのか、世界中が注目しています。
この問題は、単なる財政的な課題を超えて、デジタル時代における通貨のあり方を問い直す重要な転換点となるかもしれません。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪















