はじめに
日本のコメ流通において長年にわたり絶大な影響力を持ってきた農業協同組合(JA)。2024年の「令和の米騒動」を契機に、その支配力に変化の兆しが見え始めています。
コメの流通構造と農協の支配力について、現状と課題を詳しく見ていきましょう。
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JAの支配力を支えてきた特権的システム
【空前のコメ不足発生、流通で陰る"農協の支配力"】 727万トンの4割をJAなどが集荷しているが… #東洋経済オンラインhttps://t.co/3hJ8nM9AZf
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) February 16, 2025
無条件委託販売と共同計算の仕組み
農協の支配力の根幹には、「無条件委託販売」と「共同計算」という2つの特権的なシステムがあります。
無条件委託販売では、JA全農が農家に代わってコメの販売に関するすべての業務を担当。販売時期、価格設定、取引先の選定から精算まで一括して請け負っています。
共同計算システムは、農家間の不公平を解消するための仕組みです。
同じ品質のコメでも、販売時期や取引先によって価格が変動する中、一定期間の平均価格で農家への精算を行うことで、零細農家の経営を支えてきました。
変わりゆく流通構造
集荷率の低下傾向
JAの集荷率は年々低下傾向にあります。2004年には45%だった集荷率が、2022年には39%まで減少。
一方で、農家による直接販売は同期間に26%から32%へと増加しています。この変化の背景には、以下の要因があります:
- 農家の大規模化による経営体力の向上
- ECサイトやふるさと納税による販路の多様化
- 民間業者による高値での買取りと即時現金決済の提供
令和の米騒動がもたらした影響
2024年夏の米騒動以降、JAの集荷率はさらに低下。民間業者がJAの提示する概算金を上回る価格を提示し、新規参入業者も増加したことで、従来のJA中心の流通構造が大きく揺らいでいます。
インボイス制度が示す新たな展開
農協特例の影響
2023年10月から始まったインボイス制度は、農協の支配力に新たな転機をもたらす可能性があります。
制度における「農協特例」により、JAへの出荷にはインボイス交付義務が免除されるという特典が設けられました。
この特例は、特に以下の点で重要な意味を持ちます:
- 免税事業者である小規模農家の取引保護
- JAの集荷における優位性の確保
- 2026年以降の流通構造への影響
今後の展望
米価の高騰は、政府の施策により早期に緩和される可能性があります。2025年産米では増産計画が進められており、政府備蓄米の放出も検討されています。
しかし、JAの支配力が維持される限り、市場原理に基づく健全な価格形成は難しい状況が続くかもしれません。
コメ流通におけるJAの支配力:まとめ
コメ流通におけるJAの支配力は、特権的システムと制度的保護により長年維持されてきました。
しかし、農業構造の変化や新たな流通チャネルの登場により、その影響力は徐々に低下しています。
インボイス制度の影響も含め、今後のコメ流通がどのように変化していくのか、注目が集まります。消費者利益の観点からも、より健全な流通構造の実現が望まれています。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪