はじめに
2025年2月、韓国の政界に衝撃が走りました。ソウル中央地検長の李昌洙氏ら3名の検事に対する弾劾訴追において、共に民主党が前代未聞の「弾劾事由の変更」を行ったのです。
これは単なる手続き上の問題ではなく、韓国の民主主義と法の支配に関わる重大な問題を提起しています。
弾劾とは、公職者の重大な法律違反や職務上の義務違反を理由に、その職から罷免するための憲法上の手続きです。
それは慎重に、そして確固たる証拠に基づいて行われるべきものです。しかし今回の事例は、この重要な憲法上の手段が、政治的な目的のために軽々しく使用されている実態を明らかにしました。
本稿では、この「弾劾事由の変更」という異例の事態を通じて、現代韓国における政治と司法の関係性、そして民主主義の課題について考察していきます。
目次 [非表示]
事件の概要と背景
ソウル中央地検長ら3検事をでたらめに弾劾訴追した共に民主党、裁判中に弾劾事由も変更するだなんて【2月19日付社説】
— 朝鮮日報日本語版 (@chosunonline) February 19, 2025
李昌洙(イ・チャンス)ソウル中央地検長ら検事3人の弾劾事件に対する憲法裁判所の最初の弁論期日で、進歩(革新)系最大野党…https://t.co/9l9xq4ftKJ pic.twitter.com/h737cHnJvq
韓国の政治において、「弾劾」という強力な政治的手段が乱用されている状況が浮き彫りになっています。
特に注目すべきは、ソウル中央地検長の李昌洙氏ら3名の検事に対する弾劾訴追案において、進歩系最大野党である共に民主党が弾劾事由を途中で変更するという前代未聞の事態が発生したことです。
当初の弾劾事由とその問題点
弾劾訴追の発端となったのは、「ドイツ・モータース株価操作」事件における金建希大統領夫人への「嫌疑なし」処分でした。
共に民主党は、この処分が政治的中立義務に違反するとして弾劾を推進しました。
具体的な弾劾事由として挙げられたのは:
- 李地検長が「嫌疑なし」処分当日に記者会見場で虚偽の発言をしたこと
- 他の検事が国政監査の場で虚偽の証言をしたこと
しかし、これらの事由には重大な事実誤認がありました。李地検長は実際には記者会見に出席しておらず、もう一人の検事も国政監査に出席していなかったのです。
弾劾事由変更の意味するもの
政治的意図の露呈
弾劾事由の変更は、この弾劾訴追が政治的な目的で行われたことを如実に示しています。特に:
- 具体的な証拠の欠如:重大な憲法・法律違反の具体的証拠が提示されていない
- 政略的な目的:李在明代表の捜査を進めるソウル中央地検の機能を麻痺させようとする意図が見られる
- 手続きの軽視:弾劾事由の変更には本来、国会での再議決が必要
憲法裁判所の対応をめぐる問題
準備期日において、憲法裁判官らは弾劾訴追事由の曖昧さを指摘し、却下の可能性を示唆しました。
これに対し、民主党の代理人が「証拠を憲法裁が確保してほしい」と要請するという異常な事態も発生しています。
より広い文脈での問題点
相次ぐ根拠なき弾劾訴追
尹錫悦政権発足後、民主党が推進した13件の弾劾訴追案の多くが十分な根拠を欠いていました:
- 韓悳洙前権限代行の「内乱」関連での弾劾訴追
- 李真淑放送通信委員長の就任わずか2日での弾劾訴追
- 李代表の「対北送金事件」捜査検事への弾劾訴追
憲法裁判所の責任
憲法裁判所の対応にも問題が指摘されています。明らかに根拠不足の弾劾案件の審理を長期化させ、一部の案件では:
- 李真淑委員長の弾劾:棄却まで174日
- 李代表捜査検事の弾劾:棄却まで270日
という長期間を要しています。
「弾劾事由の変更」とは:まとめ
「弾劾事由の変更」という前例のない事態は、韓国の政治における法的手段の乱用と、それを可能にしている制度的な問題点を浮き彫りにしています。
弾劾という重要な憲法上の手段が、政治的な道具として軽々しく使用されている現状は、民主主義の健全な発展という観点から深刻な懸念を投げかけています。
この問題の解決には、弾劾制度の適切な運用基準の確立と、憲法裁判所による迅速かつ適切な審理が不可欠です。
同時に、政治家たちには、法的手段を政治的目的のために濫用することの危険性について、より深い認識が求められます。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪