はじめに
中国の公式GDP統計の信頼性について、大きな議論が巻き起こっています。
2023年12月、著名エコノミストの高善文氏が米国でのフォーラムで示した見解とその後の処分は、中国の経済統計の透明性に関する重要な問題を浮き彫りにしました。
今回は、中国の公式GDP統計についてご紹介します。
目次
公式統計と現実のギャップ
【独自】習主席、GDP統計に疑問唱えたエコノミストを処分
— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) January 8, 2025
関係者によれば、ピーターソン国際経済研究所と中国のシンクタンクが昨年12月12日に共同主催したフォーラムで、中国の著名エコノミストである高善文氏が述べた二つの発言が習氏の怒りを買った。https://t.co/421Wdh0VIJ
エコノミストが指摘する成長率の乖離
中国政府は2023年の経済成長率を5.2%と発表し、2024年も5%程度の成長を見込んでいます。
しかし、高善文氏は実際の成長率について「過去2~3年は平均で2%程度」との見方を示しました。
この大きな乖離は、中国の経済統計に対する信頼性の問題を提起しています。
代替指標の重要性
故・李克強首相が提唱した「李克強指数」として知られる電力消費量、鉄道輸送量、銀行融資という3つの指標は、GDPに代わる経済活動の実態を示す重要な指標として注目されてきました。
これは、中国の政策立案者たち自身がGDP統計の限界を認識していた証左とも言えます。
統計の透明性を巡る課題
データアクセスの制限
近年、中国当局は特定の経済データへのアクセスを制限し、一部のデータの公表を停止しています。
例えば、2023年後半には若年層失業率の公表を一時中断し、再開後も大学生を調査対象から除外するなど、データの透明性に関する懸念が高まっています。
国際金融機関の見方
バークレイズやノムラなどの国際金融機関のエコノミストたちは、中国の経済指標に不一致があることを指摘しています。
特に、公式統計と不動産・金融セクターの実態との間にある矛盾が注目されています。
経済統計と政治的影響
成長目標との関連性
習近平国家主席が掲げる2035年までの経済規模倍増計画には、年平均5%近い成長率が必要とされています。
この野心的な目標は、統計データの信頼性に影響を与える可能性があると指摘されています。
言論統制の強化
高善文氏の処分後、中国証券業協会は証券会社や資産運用会社に対し、政府の政策解釈において「前向きな役割」を果たすよう要請しました。
これは経済に関するネガティブな論評を抑制しようとする動きとして注目されています。
今後の展望と課題:まとめ
中国経済は現在、不動産不況、高水準の債務、過剰生産能力などの構造的な問題に直面しています。
これらの課題に対する適切な対応には、正確な経済データの把握と透明性の確保が不可欠です。
しかし、経済統計の信頼性に疑問を投げかける声に対する強硬な対応は、投資家の中国市場に対する理解をさらに困難にする可能性があります。
経済の実態を正確に把握し、適切な政策を立案するためには、透明性の高い統計システムの構築が求められています。
これらの課題に対して、中国がどのように向き合い、統計の信頼性を確保していくのか。それは今後の中国経済の発展にとって重要な鍵となるでしょう。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。(^^♪