はじめに
アメリカと中国の貿易摩擦が新たな局面を迎えています。
今回は、最近話題となっている「小口貨物」について、その定義から現状の課題まで詳しく解説していきます。
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小口貨物の定義と制度の背景
小口貨物とは、個人や企業が少量・少額で輸入する荷物のことを指します。
アメリカでは「デミニミスルール」という特例措置により、輸入申告額が800ドル(約12万4000円)以下の貨物については、関税が免除され、簡素化された輸入手続きが適用されてきました。
この制度は2016年に大きな変更があり、非課税基準額が200ドルから800ドルに引き上げられました。その本来の目的は、政府の通関手続きにかかる行政負担を軽減することにありました。
中国系越境EC企業の急成長と制度利用
【中国発のTemuやSHEINに「トランプ関税」の試練】 米政府、小口輸入品の免税特例から中国を除外 #東洋経済オンラインhttps://t.co/iWQu7VBnCq
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) February 12, 2025
TemuとSHEINの台頭
この制度を最も効果的に活用してきたのが、中国発の越境EC企業です。特に以下の企業が注目されています:
- Temu(テム):激安商品を扱う越境ECプラットフォーム
- SHEIN(シーイン):低価格アパレルに特化したEC企業
これらの企業は、デミニミスルールを活用することで、関税負担を回避しながら、アメリカ市場での急成長を実現してきました。
小口貨物取扱量の爆発的増加
CBP(アメリカ税関・国境警備局)の統計によると、デミニミスルールが適用された貨物の数は驚異的な増加を示しています:
- 2015年:1億3900万個
- 2024年:13億個以上
この9年間で約10倍という急激な増加は、中国系越境EC企業の成長を如実に示しています。
トランプ政権による規制強化と影響
新たな規制措置
トランプ大統領は2024年2月1日、中国からの輸入品に対して以下の措置を実施しました:
- 全般的な10%の追加関税
- 小口貨物への非課税特例の適用停止
これにより、800ドル以下の小口貨物であっても、10%の関税と関連費用の支払いが必要となり、より複雑な正規の通関手続きが求められることになりました。
越境EC業界への影響
この規制強化に対する業界の反応は様々です:
- 楽観的な見方:「10~20%の追加関税では中国製品の価格競争力は維持できる」
- 懸念する声:「関税以外にも、物流費用、通関費用、コンプライアンスコストの増加が予想される」
今後の展望:まとめ
規制強化により、中国の越境EC企業はビジネスモデルの見直しを迫られることになります。
しかし、アメリカ市場の魅力は依然として高く、アマゾンが対抗サービス「Amazon Haul」を立ち上げたことからも、この市場の重要性が伺えます。
一方で、2月7日にはトランプ大統領が適用停止の一時延期を表明するなど、制度の運用面での課題も浮き彫りになっています。
今後は、公平な競争環境の整備と効率的な通関システムの構築が求められることになるでしょう。
小口貨物を巡る問題は、単なる通関手続きの問題ではなく、米中貿易関係や電子商取引の未来を占う重要な論点となっています。今後の動向に注目が集まります。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪