年金受給者は確定申告が必要?不要?金額の目安・申告すべきケースをわかりやすく解説

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はじめに

年金を受け取り始めると、「確定申告は必要なのか」「いくらまでなら申告しなくていいのか」と疑問に思う方は多いでしょう。実は、年金受給者には「申告不要制度」があり、一定の条件を満たせば確定申告をしなくても済みます。

しかし、確定申告をすることで税金が戻ってくるケースもあります。この記事では、年金受給者が確定申告すべきかどうかの判断基準や、申告が必要なケース、申告した方が得するケースを分かりやすく解説します。

はじめての確定申告でも迷いません

年金受給者は確定申告が必要?不要?まずは判断基準を確認

年金を受給している方は、すべての方が確定申告をしなければならないわけではありません。まずは基本的な判断基準を理解しましょう。

確定申告が必要になる年金受給者の基本条件

公的年金(国民年金や厚生年金など)を受け取っている場合、原則として確定申告が必要です。公的年金は「雑所得」として所得税の課税対象となるためです。

ただし、すべての年金受給者に確定申告が求められるわけではなく、以下のような場合には申告が必要になります。

公的年金等の収入金額が400万円を超える場合: 1年間に受け取った公的年金等の合計額が400万円を超える場合は、必ず確定申告が必要です。

公的年金等以外の所得金額が20万円を超える場合: 年金以外に給与所得、事業所得、不動産所得などがあり、その所得金額(収入から必要経費を差し引いた金額)が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

医療費控除や寄附金控除などを受けたい場合: 申告不要制度を利用できる場合でも、医療費控除や寄附金控除などを受けて税金の還付を受けたい場合は、任意で確定申告を行います。

外国の年金を受け取っている場合: 外国の年金は申告不要制度の対象外となるため、確定申告が必要になります。

複数の企業年金を受け取っている場合: 企業年金の種類や金額によっては、確定申告が必要になることがあります。

年金受給者であっても、会社に勤めている、事業を営んでいる、不動産収入があるなど、年金以外の収入がある場合は、特に注意が必要です。

確定申告が不要になる「申告不要制度」とは

年金受給者の確定申告の手間を軽減するため、一定の条件を満たす場合には確定申告が不要になる「年金受給者の確定申告不要制度」が設けられています。

この制度は平成23年分(2011年分)から始まりました。高齢者の方の負担を減らすために導入された制度です。

申告不要制度の適用条件

以下の2つの条件をどちらも満たす場合、確定申告が不要になります。

  1. 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であること: 国民年金、厚生年金、共済年金など、すべての公的年金を合わせた1年間の受取額が400万円以下である必要があります。
  2. 公的年金等以外の所得金額が20万円以下であること: 給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得など、年金以外のすべての所得を合計して20万円以下である必要があります。ここでいう「所得金額」とは、収入から必要経費を差し引いた金額です。

この2つの条件を満たせば、確定申告をしなくても法律上問題ありません。

申告不要制度を利用する際の注意点

申告不要制度を利用できる場合でも、以下の点に注意が必要です。

住民税の申告は別: 確定申告が不要でも、住民税の申告は必要な場合があります。市区町村によって扱いが異なりますので、お住まいの市区町村に確認しましょう。

源泉徴収された税金が戻る可能性: 年金から源泉徴収された税金が、実際に納めるべき税額より多い場合、確定申告をすれば還付を受けられます。申告不要制度を利用すると、この還付を受けられません。

医療費控除などは適用できない: 申告不要制度を利用すると、医療費控除や寄附金控除などを適用して税金を取り戻すことができません。これらの控除を受けたい場合は、任意で確定申告を行う必要があります。

自分が対象かすぐわかるチェックリスト

自分が確定申告をすべきかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。

公的年金等の収入が年間400万円を超えている → YES の場合: 確定申告が必要です

公的年金等以外の所得(給与、事業、不動産など)が年間20万円を超えている → YES の場合: 確定申告が必要です

外国の年金を受け取っている → YES の場合: 確定申告が必要です

医療費が年間10万円以上(または所得の5%以上)かかった → YES の場合: 確定申告をすると医療費控除で税金が戻る可能性があります

ふるさと納税や認定NPO法人などへ寄附をした(ワンストップ特例を利用していない) → YES の場合: 確定申告をすると寄附金控除で税金が戻る可能性があります

年金から源泉徴収されている税金がある → YES の場合: 確定申告をすると税金が戻る可能性があります

国民健康保険料や介護保険料を自分で支払った → YES の場合: 確定申告をすると社会保険料控除で税金が戻る可能性があります

上記のいずれかに当てはまる場合は、確定申告を検討しましょう。特に医療費控除や社会保険料控除を適用すれば、払いすぎた税金が戻ってくる可能性が高くなります。

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確定申告が不要になる「年金受給者の条件」と金額の目安

年金受給者が確定申告不要になる具体的な条件と金額の目安を見ていきましょう。

公的年金はいくらまでなら確定申告不要?

申告不要制度を利用できる年金額の上限は、年間400万円です。これには以下のような年金が含まれます。

対象となる公的年金等

  • 国民年金(老齢基礎年金)
  • 厚生年金(老齢厚生年金)
  • 共済年金
  • 恩給
  • 過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金
  • 確定給付企業年金

これらの年金を合計して400万円以下であれば、公的年金等の収入金額の条件はクリアします。

400万円を超えるケースは少ない

実際のところ、公的年金の受給額が年間400万円を超えるケースは、それほど多くありません。令和6年度の老齢基礎年金の満額は年間約81万6,000円、厚生年金の平均受給額は月額約14万円程度(年間約168万円)とされています。これらを合わせても400万円には届かないため、多くの年金受給者は公的年金等の収入金額の条件を満たすことになります。

ただし、現役時代に高収入だった方や、複数の年金を受け取っている方は、400万円を超える可能性があるため注意が必要です。

企業年金の扱いに注意

企業年金のうち、確定給付企業年金は「公的年金等」に含まれますが、確定拠出年金(企業型DC、iDeCo)の一時金は「公的年金等」には含まれず、「退職所得」として扱われます。また、確定拠出年金を年金として受け取る場合は「公的年金等」に含まれます。

65歳以上・65歳未満で異なる控除額の違い

公的年金には、給与所得における給与所得控除と同様に、「公的年金等控除」という控除があります。この控除額は、年齢によって異なります。

65歳未満の場合(令和2年分以降)

公的年金等の収入金額が130万円までは、公的年金等控除として60万円が差し引かれます。つまり、年金収入が130万円以下であれば、公的年金等に係る雑所得は70万円以下となります。

さらに基礎控除(48万円)を差し引くと、所得税の課税対象額は22万円以下となるか、ゼロになります。ただし、他の所得がある場合は合算されます。

65歳以上の場合(令和2年分以降)

公的年金等の収入金額が330万円までは、公的年金等控除として110万円が差し引かれます。つまり、年金収入が330万円以下であれば、公的年金等に係る雑所得は220万円以下となります。

基礎控除(48万円)を差し引いた後でも、ある程度の課税所得が残る可能性がありますが、配偶者控除や扶養控除、社会保険料控除、医療費控除などを適用することで、実際の税額が減少したり、ゼロになったりすることがあります。

年齢による違いのまとめ

年齢公的年金等の収入金額公的年金等控除額差引後の所得
65歳未満130万円以下60万円70万円以下
65歳未満130万円超〜410万円以下収入金額×25%+27万5千円変動
65歳以上330万円以下110万円220万円以下
65歳以上330万円超〜410万円以下収入金額×25%+27万5千円変動

この表から分かるように、65歳以上の方の方が、公的年金等控除額が大きく、税負担が軽くなる仕組みになっています。

令和2年からの改正点

令和2年分から、公的年金等控除の仕組みが改正され、控除額が一律10万円引き下げられました。その代わり、基礎控除が10万円引き上げられたため、公的年金等のみを受け取っている方の税負担は基本的に変わりません。

ただし、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合は、控除額に上限(195万5千円)が設けられました。また、公的年金等以外の所得金額が1,000万円を超える場合にも、控除額が段階的に減少します。

年金にかかる源泉徴収の仕組み

公的年金からも、一定額以上の場合は所得税が源泉徴収されます。

源泉徴収される金額の計算方法

年金から源泉徴収される所得税額は、以下のように計算されます。

  1. 65歳未満の場合: 年金支給額から公的年金等控除額(月額10万8,333円、年額130万円に相当)と社会保険料を差し引いた金額に5.105%を掛けた金額が源泉徴収されます。
  2. 65歳以上の場合: 年金支給額から公的年金等控除額(月額27万5,000円、年額330万円に相当)と社会保険料を差し引いた金額に5.105%を掛けた金額が源泉徴収されます。

扶養親族等申告書の提出が重要

年金から差し引かれる源泉徴収税額は、「扶養親族等申告書」を提出しているかどうかで大きく変わります。

申告書を提出している場合: 上記の計算方法で源泉徴収されます。扶養親族がいる場合は、さらに控除額が加算されるため、源泉徴収額が少なくなります。

申告書を提出していない場合: 年金支給額から社会保険料を差し引いた金額に対して、一律5.105%が源泉徴収されます。公的年金等控除や扶養控除などが考慮されないため、源泉徴収額が多くなります。

日本年金機構から毎年送られてくる「扶養親族等申告書」は、必ず期限内に提出するようにしましょう。提出を忘れると、必要以上に税金が天引きされてしまいます。

源泉徴収された税金は確定申告で精算される

年金から源泉徴収される税額は、あくまで概算です。実際に納めるべき税額は、1年間の所得と各種控除を確定申告で計算して確定します。

源泉徴収された税額が実際の税額より多い場合は、確定申告をすることで還付を受けられます。逆に不足している場合は、追加で納税する必要があります。

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年金以外の収入がある場合に確定申告が必要になるケース

年金受給者でも、年金以外の収入がある場合は確定申告が必要になることがあります。

パート・アルバイト収入がある場合

年金を受け取りながら、パートやアルバイトで働いている方も多いでしょう。この場合の確定申告の要否は、給与収入の金額によって異なります。

給与所得の計算方法

給与収入から給与所得控除を差し引いた金額が「給与所得」となります。令和2年分以降、給与所得控除の最低額は55万円です。つまり、給与収入が55万円以下であれば、給与所得はゼロになります。

確定申告が必要になるケース

公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告不要制度を利用できます。

給与収入が75万円(給与所得控除55万円を差し引くと給与所得20万円)以下であれば、申告不要制度の条件を満たします。

一方、給与収入が75万円を超える場合は、給与所得が20万円を超えるため、確定申告が必要になります。

勤務先で年末調整を受けている場合

パート・アルバイト先で年末調整を受けている場合でも、公的年金を受け取っている場合は、原則として確定申告が必要です。ただし、上記の申告不要制度の条件を満たせば、確定申告をしなくても問題ありません。

複数の勤務先がある場合

2カ所以上から給与を受け取っている場合は、メインの勤務先で年末調整を受けていても、サブの勤務先からの給与が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

副業・不動産・配当収入がある場合

年金以外に、副業収入、不動産収入、配当収入などがある場合も、確定申告が必要になることがあります。

副業収入(事業所得・雑所得)がある場合

自宅でネットビジネスを行っている、原稿料や講演料を受け取っているなど、副業による収入がある場合、その所得金額(収入から必要経費を差し引いた金額)が20万円を超えると確定申告が必要です。

副業の収入が20万円を超えていても、必要経費を差し引いた所得が20万円以下であれば、申告不要制度を利用できます。

不動産収入がある場合

アパートやマンション、駐車場などを貸して家賃収入を得ている場合、不動産所得の金額(収入から必要経費を差し引いた金額)が20万円を超えると確定申告が必要です。

不動産所得の計算では、固定資産税、修繕費、減価償却費、管理費などを必要経費として差し引くことができます。

配当収入がある場合

株式の配当金や投資信託の分配金を受け取っている場合、配当所得の金額が20万円を超えると確定申告が必要です。

ただし、上場株式等の配当で、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合や、少額配当(1回に支払われる配当が5万円以下)の場合は、確定申告をしなくても問題ありません。

一方、配当控除を受けたり、損益通算をしたりするために、あえて確定申告をすることもできます。

株式の譲渡益がある場合

株式を売却して利益が出た場合も、原則として確定申告が必要です。ただし、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、口座内で自動的に税金が計算・徴収されるため、確定申告は不要です。

NISA口座で購入した株式の譲渡益は非課税のため、確定申告は不要です。

在職老齢年金に該当する場合の注意点

60歳以降も働きながら年金を受け取る場合、「在職老齢年金」という制度が適用されます。

在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合に、給与と年金の合計額に応じて年金額が調整される(減額または停止される)仕組みです。

65歳未満の場合は、総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額と過去1年間の標準賞与額の合計の12分の1を加えた額)と基本月額(年金の月額)の合計が48万円を超えると、年金の一部または全部が支給停止されます。

65歳以上の場合は、総報酬月額相当額と基本月額の合計が50万円を超えると、年金の一部または全部が支給停止されます。

確定申告における注意点

在職老齢年金で年金が減額または停止されている場合でも、実際に支給された年金額と給与収入を合算して、確定申告の要否を判断します。

例えば、本来の年金額は年間200万円だが、在職老齢年金により年間50万円しか支給されなかった場合、確定申告では実際に支給された50万円を年金収入として申告します。

また、給与所得がある場合は、給与の金額によって確定申告が必要になる可能性が高くなります。給与と年金の両方を受け取っている場合は、給与から源泉徴収された税額と年金から源泉徴収された税額を合算し、正しい税額を計算するために確定申告を行います。

働きながら年金を受け取る場合の税負担

働きながら年金を受け取ると、給与所得と年金所得が合算されるため、税負担が増えることがあります。ただし、各種控除を適用することで、実際の税額を抑えることができます。

特に、社会保険料控除(健康保険料、厚生年金保険料など)は、給与から天引きされる分だけでなく、自分で支払った国民健康保険料や介護保険料なども控除できますので、忘れずに申告しましょう。

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年金受給者でも確定申告をした方が得するケースとは?

申告不要制度を利用できる場合でも、確定申告をすることで税金が戻ってくるケースがあります。

医療費控除・社会保険料控除が使えるケース

年金受給者にとって、最も身近な控除が医療費控除と社会保険料控除です。

医療費控除

1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円、または総所得金額等の5%のいずれか低い方)を超えた場合、その超えた金額を所得から差し引くことができます。

年金受給者の場合、病院に通う機会が多く、医療費が高額になることがあります。以下のような費用も医療費控除の対象となります。

  • 病院や診療所での治療費、薬代
  • 薬局で購入した医薬品(治療目的のもの)
  • 通院のための交通費(公共交通機関を利用した場合)
  • 入院時の部屋代や食事代
  • 介護保険サービスの一部(訪問看護、訪問リハビリなど)
  • 治療のためのマッサージや鍼灸の費用

家族全員の医療費を合算できるため、配偶者や同居する子どもの医療費も含めて計算しましょう。

また、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)を選択することもできます。これは、健康診断を受けるなど一定の取り組みを行っている人が、スイッチOTC医薬品(薬局で購入できる特定の医薬品)を年間1万2,000円以上購入した場合に、1万2,000円を超えた金額(上限8万8,000円)を所得から差し引ける制度です。

社会保険料控除

国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料などを自分で支払った場合、その全額を所得から差し引くことができます。

年金から天引きされる社会保険料は、日本年金機構が発行する「公的年金等の源泉徴収票」に記載されており、自動的に控除されます。しかし、それ以外に自分で支払った保険料がある場合は、確定申告で申告する必要があります。

例えば、以下のようなケースでは、社会保険料控除を忘れないようにしましょう。

  • 配偶者や子どもの国民健康保険料を自分が支払った場合
  • 年金から天引きされる前に、自分で納付した介護保険料がある場合
  • 任意継続の健康保険料を支払った場合

社会保険料控除は、支払った全額が控除されるため、節税効果が大きい控除です。領収書や通知書をきちんと保管しておきましょう。

その他の控除

年金受給者が利用できる主な控除には、以下のようなものがあります。

  • 生命保険料控除: 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に適用されます
  • 地震保険料控除: 地震保険料を支払った場合に適用されます
  • 寄附金控除: ふるさと納税や認定NPO法人などへの寄附をした場合に適用されます
  • 配偶者控除・配偶者特別控除: 配偶者の所得が一定以下の場合に適用されます
  • 扶養控除: 扶養親族がいる場合に適用されます
  • 障害者控除: 本人や配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用されます
  • 寡婦控除・ひとり親控除: 一定の要件を満たすひとり親などに適用されます

これらの控除を適用することで、税金を大きく減らせる可能性があります。

源泉徴収された税金が戻る「還付申告」

年金から源泉徴収された税金が、実際に納めるべき税額より多い場合、確定申告をすることで還付を受けられます。これを「還付申告」といいます。

還付申告ができるケース

以下のような場合、還付申告によって税金が戻ってくる可能性があります。

扶養親族等申告書を提出していない場合: 扶養親族等申告書を提出し忘れたため、年金から多めに源泉徴収されている場合は、確定申告で正しい税額を計算することで、払いすぎた税金が戻ってきます。

年の途中で退職した場合: 年の途中で退職し、その年は給与と年金の両方を受け取った場合、給与から源泉徴収された税額が多くなっていることがあります。確定申告で1年間の所得を通算して計算することで、還付を受けられます。

医療費控除や社会保険料控除を適用する場合: 医療費控除や社会保険料控除を適用することで、課税所得が減少し、源泉徴収された税金が戻ってくることがあります。

年金収入が少ない場合: 公的年金等控除や基礎控除を適用すると、課税所得がゼロまたは少額になるにもかかわらず、年金から源泉徴収されている場合は、還付を受けられます。

還付申告の期限

還付申告は、通常の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に限らず、翌年1月1日から5年間いつでも提出できます。つまり、2024年分の還付申告は、2025年1月1日から2029年12月31日まで可能です。

税務署が混雑する2月・3月を避けて、1月に申告することもできます。還付金は、申告後通常1カ月〜1カ月半程度で指定した口座に振り込まれます。e-Taxで申告した場合は、3週間程度で還付されることが多いです。

確定申告をしないと損をする具体例

確定申告をしないことで、どのくらい損をするのか、具体例で見てみましょう。

例1: 医療費控除を適用するケース

  • 年金収入: 250万円(65歳以上)
  • 公的年金等控除: 110万円
  • 公的年金等に係る雑所得: 140万円
  • 1年間の医療費: 30万円
  • 医療費控除額: 20万円(30万円-10万円)
  • 基礎控除: 48万円
  • 社会保険料控除: 22万円

医療費控除を適用しない場合 課税所得: 140万円 – 48万円 – 22万円 = 70万円 所得税額: 70万円 × 5% = 3万5,000円

医療費控除を適用する場合 課税所得: 140万円 – 48万円 – 22万円 – 20万円 = 50万円 所得税額: 50万円 × 5% = 2万5,000円

還付される金額: 1万円

医療費控除を適用するだけで、1万円の還付を受けられます。さらに、翌年度の住民税も2万円減額されるため、合計3万円の節税効果があります。

例2: 社会保険料控除を追加で適用するケース

  • 年金収入: 200万円(65歳以上)
  • 公的年金等控除: 110万円
  • 公的年金等に係る雑所得: 90万円
  • 基礎控除: 48万円
  • 年金から天引きされた社会保険料: 18万円
  • 自分で支払った配偶者の国民健康保険料: 10万円

社会保険料控除を追加適用しない場合 課税所得: 90万円 – 48万円 – 18万円 = 24万円 所得税額: 24万円 × 5% = 1万2,000円

社会保険料控除を追加適用する場合 課税所得: 90万円 – 48万円 – 18万円 – 10万円 = 14万円 所得税額: 14万円 × 5% = 7,000円

還付される金額: 5,000円

配偶者の国民健康保険料を自分で支払った分を申告することで、5,000円の還付を受けられます。住民税も1万円減額されるため、合計1万5,000円の節税効果があります。

例3: 年の途中で退職した場合

  • 1月〜9月の給与収入: 300万円
  • 源泉徴収された所得税: 8万円
  • 10月〜12月の年金収入: 50万円(65歳以上)
  • 源泉徴収された所得税: 5,000円

確定申告をしない場合 源泉徴収された税金(8万5,000円)がそのままになります。

確定申告をする場合

  • 給与所得: 300万円 – 98万円(給与所得控除) = 202万円
  • 公的年金等に係る雑所得: 50万円 – 27万5,000円(4カ月分の概算控除) = 約22万5,000円
  • 合計所得: 224万5,000円
  • 基礎控除: 48万円
  • 社会保険料控除: 45万円
  • 課税所得: 131万5,000円
  • 所得税額: 131万5,000円 × 5% = 6万5,750円

還付される金額: 約1万9,000円

年の途中で退職した場合、月々の源泉徴収では年末調整が行われていないため、多めに税金が天引きされています。確定申告をすることで、約1万9,000円の還付を受けられます。

これらの例からわかるように、確定申告をすることで数千円から数万円の還付を受けられる可能性があります。手間はかかりますが、申告する価値は十分にあるでしょう。

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年金受給者の確定申告のやり方・必要書類・注意点まとめ

最後に、年金受給者が確定申告をする際の具体的な手順と必要書類を確認しましょう。

確定申告に必要な書類一覧

年金受給者が確定申告をする際に必要な主な書類は以下の通りです。

必ず必要な書類

公的年金等の源泉徴収票: 日本年金機構や共済組合などから送られてくる源泉徴収票です。年金収入の金額や源泉徴収された税額、社会保険料の金額などが記載されています。複数の年金を受け取っている場合は、すべての源泉徴収票が必要です。通常、1月中旬から2月初旬にかけて郵送されます。

マイナンバーカードまたは通知カードと本人確認書類: マイナンバーカードがあれば、それ1枚で本人確認ができます。マイナンバーカードがない場合は、通知カードまたはマイナンバーが記載された住民票の写しと、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類が必要です。

還付先の口座情報: 還付金を受け取るための銀行口座の情報(金融機関名、支店名、口座番号、口座名義)が必要です。本人名義の口座を指定しましょう。

該当する場合に必要な書類

給与所得の源泉徴収票: パートやアルバイトをしている場合は、勤務先から交付される源泉徴収票が必要です。

医療費控除の明細書: 医療費控除を受ける場合は、医療費控除の明細書を作成します。令和元年分以降、医療費の領収書の提出は不要になりましたが、5年間は保管しておく必要があります。医療費通知(医療費のお知らせ)があれば、それを添付することで明細書の記入を簡略化できます。

社会保険料の控除証明書または領収書: 国民健康保険料や介護保険料を自分で納付した場合は、納付額がわかる書類が必要です。国民年金保険料を支払った場合は、日本年金機構から送られてくる「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が必要です。

生命保険料控除証明書: 生命保険料控除を受ける場合は、保険会社から送られてくる控除証明書が必要です。

地震保険料控除証明書: 地震保険料控除を受ける場合は、保険会社から送られてくる控除証明書が必要です。

寄附金の受領証明書: ふるさと納税や認定NPO法人などへの寄附をした場合は、寄附先から送られてくる受領証明書または寄附金控除に関する証明書が必要です。

住宅ローン控除関係書類(初年度のみ): 住宅ローン控除を初めて受ける場合は、住宅借入金等特別控除額の計算明細書、住宅ローンの年末残高証明書、登記事項証明書、売買契約書または請負契約書の写しなどが必要です。2年目以降は、税務署から送られてくる「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と住宅ローンの年末残高証明書があれば、年末調整で控除を受けられます(年金受給者で給与所得がない場合は、確定申告が必要です)。

その他の所得に関する書類: 不動産所得、事業所得、配当所得などがある場合は、それぞれの収入と必要経費を証明する書類が必要です。

これらの書類を事前に準備しておくと、スムーズに確定申告を行うことができます。

確定申告の流れと提出期限

年金受給者の確定申告の基本的な流れは以下の通りです。

1月〜2月: 必要書類の準備

1月中旬から2月初旬にかけて、日本年金機構から「公的年金等の源泉徴収票」が送られてきます。この時期に、医療費の領収書を整理したり、保険料の控除証明書を確認したりして、必要書類を揃えましょう。

2月16日〜3月15日: 確定申告書の作成と提出

確定申告書を作成し、提出します。作成方法は以下の3つがあります。

e-Taxで電子申告する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して、パソコンやスマートフォンから申告できます。マイナンバーカードとマイナンバーカード読み取り対応のスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、自宅から24時間申告可能です。

e-Taxのメリットは以下の通りです。

  • 24時間いつでも申告できる
  • 税務署に行く必要がない
  • 還付金が早く振り込まれる(通常3週間程度)
  • 添付書類の提出を省略できる(ただし、5年間は保管が必要)

初めての方でも、画面の案内に従って入力していけば、比較的簡単に申告書を作成できます。

スマートフォン・タブレット専用画面で申告する

令和5年分からは、年金受給者向けのスマートフォン・タブレット専用画面が用意されています。画面が見やすく、操作も簡単なので、スマートフォンに慣れている方におすすめです。

マイナンバーカードとマイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンがあれば、すべての手続きをスマートフォンだけで完結できます。

書面で提出する

確定申告書を手書きで作成するか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成して印刷したものを、税務署に直接持参するか、郵送で提出します。

税務署の相談窓口を利用すれば、職員のサポートを受けながら申告書を作成することもできます。ただし、2月・3月の確定申告期間中は非常に混雑するため、早めに行くか、事前予約をすることをおすすめします。

申告期限と納税・還付

  • 申告期限: 原則として翌年2月16日〜3月15日(土日祝日の場合は翌平日)
  • 納税期限: 申告期限と同じ3月15日まで(納税が必要な場合)
  • 還付申告: 翌年1月1日から5年間いつでも提出可能
  • 還付金の振込: 申告後、書面提出の場合は1カ月〜1カ月半程度、e-Tax提出の場合は3週間程度で指定口座に振り込まれます

還付申告の場合は、2月16日より前の1月から申告できるため、税務署の混雑を避けて早めに申告することをおすすめします。

自宅で簡単に申告する方法と注意点

年金受給者が自宅で確定申告をする際の具体的な方法と注意点を紹介します。

e-Taxでの申告手順

  1. マイナンバーカードを用意する: マイナンバーカードを持っていない方は、市区町村の窓口で申請しましょう。交付までに1カ月程度かかるため、早めに手続きを始めることをおすすめします。
  2. マイナポータルアプリをインストールする: スマートフォンで申告する場合は、「マイナポータル」アプリをインストールします。パソコンで申告する場合は、ICカードリーダーが必要です(マイナンバーカード読み取り対応のスマートフォンを持っている場合は、スマートフォンをカードリーダー代わりに使うこともできます)。
  3. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスする: 国税庁のホームページから「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」ボタンをクリックします。
  4. 提出方法を選択する: 「e-Taxで提出 マイナンバーカード方式」を選択します。
  5. 利用者識別番号を取得する(初回のみ): 初めてe-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードを使って利用者識別番号を取得します。
  6. 申告書を作成する: 画面の案内に従って、必要事項を入力していきます。源泉徴収票の内容を入力し、各種控除を適用します。医療費控除を受ける場合は、医療費の明細を入力します。
  7. 内容を確認して送信する: 入力内容を確認し、問題がなければ、マイナンバーカードで電子署名をして送信します。
  8. 受付完了を確認する: 送信が完了すると、受付番号が表示されます。この受付番号は、申告状況を確認する際に必要になりますので、メモしておきましょう。

書面で申告する場合の手順

  1. 確定申告書を入手する: 税務署で確定申告書を受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードします。または、「確定申告書等作成コーナー」で入力して印刷することもできます。
  2. 確定申告書を記入する: 源泉徴収票を見ながら、収入金額、所得金額、各種控除額などを記入します。記入方法がわからない場合は、税務署の相談窓口や確定申告の手引きを参考にしましょう。
  3. 添付書類を準備する: 源泉徴収票の原本、各種控除証明書、本人確認書類の写しなどを添付します。
  4. 税務署に提出する: 完成した確定申告書を、税務署に直接持参するか、郵送で提出します。郵送の場合は、提出日は消印の日付になります。確定申告書の控えと返信用封筒を同封すれば、受付印を押した控えを返送してもらえます。

確定申告をする際の注意点

源泉徴収票の内容を正確に転記する: 源泉徴収票に記載されている金額を、そのまま正確に確定申告書に転記しましょう。特に、年金収入の金額、源泉徴収税額、社会保険料の金額は間違えないように注意が必要です。

医療費控除の対象を正しく判断する: 医療費控除の対象となるのは、治療目的の費用です。美容目的や予防目的の費用は対象外となります。また、保険金や高額療養費で補てんされた金額は、医療費から差し引く必要があります。

扶養親族等申告書を提出していない場合は必ず確定申告を: 年金から多めに源泉徴収されているため、確定申告をしないと払いすぎた税金が戻ってきません。

期限を守る: 還付申告は5年間いつでもできますが、納税が必要な場合の確定申告は、3月15日が期限です。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。

わからないことは税務署に相談する: 確定申告について不明な点があれば、税務署の相談窓口に問い合わせましょう。電話相談センター(0570-00-5901)や、税務署での無料相談も利用できます。ただし、2月・3月は非常に混雑するため、早めに相談することをおすすめします。

書類は5年間保管する: 確定申告に使用した書類(源泉徴収票、医療費の領収書、控除証明書など)は、5年間保管する必要があります。税務署から問い合わせがあった場合に、提示を求められることがあります。

住民税の申告も確認する: 確定申告をすれば、その情報は自動的に市区町村に送られ、住民税の計算に反映されます。しかし、確定申告不要制度を利用した場合は、市区町村によっては住民税の申告が必要になることがあります。お住まいの市区町村に確認しましょう。


はじめての確定申告でも迷いません

確定申告の年金受給者:まとめ

年金受給者の確定申告は、一定の条件を満たせば不要になる「申告不要制度」がありますが、確定申告をすることで税金が戻ってくるケースも多くあります。

確定申告が必要かどうかの判断ポイント

  • 公的年金等の収入が年間400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得が20万円以下であれば、申告不要制度を利用できる
  • 給与収入が75万円を超える場合、副業収入が20万円を超える場合などは、確定申告が必要
  • 医療費控除や社会保険料控除を受けたい場合は、任意で確定申告をする

確定申告をした方が得するケース

  • 医療費が年間10万円以上(または所得の5%以上)かかった場合
  • 国民健康保険料や介護保険料を自分で支払った場合
  • ふるさと納税をした場合(ワンストップ特例を利用していない場合)
  • 扶養親族等申告書を提出しておらず、年金から多めに源泉徴収されている場合
  • 年の途中で退職し、給与から多めに源泉徴収されている場合

確定申告の方法

  • e-Taxを利用すれば、自宅から24時間いつでも申告でき、還付金も早く受け取れる
  • スマートフォンでも申告できるようになり、高齢者でも使いやすくなっている
  • 還付申告は1月から可能なので、税務署が混雑する前に早めに申告するのがおすすめ

年金受給者にとって、確定申告は難しく感じるかもしれませんが、近年ではe-Taxやスマートフォンでの申告が普及し、以前よりもずっと簡単に手続きができるようになっています。特に医療費控除や社会保険料控除を適用すれば、数万円の還付を受けられることもありますので、ぜひ確定申告にチャレンジしてみましょう。

不明な点があれば、税務署の相談窓口を活用し、期限内に正しく申告を行うことが大切です。この記事を参考に、ご自身の状況に合わせて、確定申告が必要かどうかを判断してください。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪

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