はじめに
ロシアによるウクライナ侵攻から3年が経過するなか、トランプ政権下の米国外交に大きな転換が見られています。
国連安全保障理事会や国連総会での最近の動きは、バイデン前政権とは一線を画す「対露接近」の姿勢を鮮明に示しています。この記事では、米国の対ロシア政策の変化とその背景について考察します。
目次
国連での米国の立場転換
米国の「ロシアすり寄り」鮮明…露への非難なく「紛争終結」求め、軍撤退の決議案には反対https://t.co/sOHzUgaxVR#国際
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) February 25, 2025
安保理決議の内容と反応
2月24日、国連安全保障理事会はロシアのウクライナ侵攻開始から3年の節目に会合を開き、米国が提出した「紛争終結」を求める決議を採択しました。
注目すべきは、この決議がロシアへの批判やウクライナの領土保全を求める内容を含まなかった点です。
米国、ロシア、中国、韓国など10カ国が賛成する一方、英国やフランスなど欧州5カ国は棄権しました。
欧州諸国は「ロシアの全面侵略」と表現する修正案を提出しましたが、ロシアの拒否権によって否決されています。これはウクライナ侵攻開始以降、安保理がウクライナ情勢に関する決議を採択した初めてのケースとなりました。
国連総会での米国の態度変化
より象徴的だったのは、国連総会でのウクライナと欧州諸国が中心となって作成した露軍撤退などを求める決議案に対する米国の態度です。この決議案は日本など93カ国の賛成多数で採択されましたが、米国はロシアと共に反対票を投じました。
バイデン前政権下では総会での対露非難決議に賛成し、安保理でもロシアに厳しい決議の採択を求めていたことと比較すると、明らかな政策転換と言えるでしょう。
トランプ政権の対露接近政策の背景
選挙公約としての「戦争終結」
トランプ大統領は選挙期間中から「ウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」と公約していました。今回の国連での動きは、この公約を実現するための一環とも考えられます。
ロシアに対する非難や批判を避け、単に「紛争の早期終結」を呼びかけることで、交渉の余地を残す戦略と見ることができます。
欧州との距離感
G7首脳会議でも米国の立場の変化は明らかでした。ゼレンスキー大統領も参加した会議では、「ロシアによる侵略」という表現に米国が反対したと報じられています。
これは欧州とウクライナが求める対露強硬姿勢と一線を画すものであり、米欧間の亀裂を深める結果となっています。
地政学的な戦略転換
トランプ政権は中国を最大の戦略的競争相手と位置づけ、対中牽制のためにロシアとの関係改善を模索している可能性があります。また、ウクライナ支援に対する財政負担の軽減を図る意図もあるでしょう。
米国内では「ウクライナ支援よりも国内問題を優先すべき」という声も根強く、こうした国内政治の要因も政策転換の背景にあると考えられます。
今後の展望と懸念点:まとめ
この米国の対露接近政策は、短期的にはウクライナへの国際的支援の弱体化につながる恐れがあります。欧州とウクライナは米国の態度変化に懸念を示しており、西側同盟の結束にも影響が出始めています。
一方で、トランプ政権が目指す「早期の紛争終結」が実現するかどうかは不透明です。ロシアはウクライナの一部併合を既成事実化しており、領土問題を含む和平交渉のハードルは依然として高いままです。
米国の対露政策転換は、国際秩序や安全保障環境に大きな影響を与える可能性があります。今後の展開によっては、冷戦後の国際秩序の再編につながる転換点となるかもしれません。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。(^^♪